動画解説
007 CMOS IC

007 CMOS IC

急遽 CMOS ICについて、TTL ICとの違いと使い方について解説することにします。 「急遽」になった理由として昔と違い74LSシリーズのICが入手しづらくなっていた...ということがあります。 もちろん取り扱っているショップが無いわけではありません。 ただ某インターネットショップで検索しても74HCシリーズしか出てこないので、 もしかするととてつもなく高い74LSシリーズを購入してしまう人がいるかも...と思ってしまっただけです。 1個何百円以上の金額を出してまで購入する必要のあるものではありません。 74LSシリーズの良いところは、

  1. TTLの割に低消費電力
  2. 取り扱いが簡単
  3. 値段もお手頃
という感じであったのですが、値段が高いのを無理して購入するほどのものではありません。 割り切って使えば74HCシリーズなどのCMOS ICでも問題ありません。 ...というわけで、以下にCMOS ICとTTL ICの違いと、CMOS ICの取り扱いについて解説します。


1.CMOS ICとTTL ICの違い

CMOS ICとTTL ICの根本的な違いは使用しているトランジスタにあります。 TTL ICで使用されているトランジスタはバイポーラトランジスタです。 入力電圧VIL(max)(ローレベルとして認識される最高電圧)は0.8[V]、 VIH(min)(ハイレベルとして認識される最低電圧)は2.0[V]です。 この入力電圧のレベルを「TTLレベル」と言います。

それに対しCMOS ICで使用されているトランジスタはFET(電界効果トランジスタ)で、 一般的に入力電圧が電源電圧の70%以上のときHigh level、30%以下のときLow levelと認識されます。 ちなみに入力電圧として (VCC / 2) を入力してしまうと出力抵抗が小さくなって大電流が流れてしまう可能性がありますので、 現実にそのような電圧を入力することは避けた方が良いでしょう。

TTLの出力電圧VOLは0.4[V]以下、VOHは2.4[V]以上です。 ここで「あれっ!」と思われた方、鋭いですねぇ~。 ハイレベルの出力電圧が2.4[V]...ということは、TTL出力をそのままCMOS ICの入力に繋いでしまいますと、 本来ならハイレベルとして認識して欲しいところがローレベルと誤認識されてしまう可能性があります。 さて困った...、解決方法としてもっとも簡単な方法は【プルアップ抵抗を付ける】です。 プルアップ抵抗の大きさですが、大きくても3.3KΩ以下くらいにした方が良いでしょう。 大きすぎるとプルアップできなくなってしまう可能性があります。 インターネットで検索してみると1[KΩ]を勧めているところが多いような感じです。

逆にCMOS ICの出力端子にTTL ICを接続する場合ですが、電圧的にはまったく問題ありません。 データシートを見た感じですと電流についても、74HCシリーズを使う分には74LSシリーズを使う感覚で大丈夫だと思います。

しかし、CMOS ICの中には4000シリーズや4500シリーズというものもありまして、これらのICの出力電流はかなり小さいものが多いです。 これらのCMOS ICでは流せる電流値が小さいものが多いので、 現実的にはICの出力端子ひとつに対してTTL ICの入力端子ひとつにしておいた方が良いでしょう。 場合によってはバッファを間にかませる必要があるかもしれません。


最後に、CMOS ICはTTL ICに比べて動作が遅いらしいです。 おそらくここで言っているCMOS ICとは4000シリーズや4500シリーズのことだと思いますが、 高速動作させる際には気を付けてくださいね。


2.TTLとCMOSとプルアップ、入力端子未処理のときの出力電圧

下図のような回路を構成し、信号をデジタルオシロで見たときの様子が更にその下の画像です。

テスターは74HC04の入力端子(1番ピン)に、オシロにはINPUT(74LS04の1番ピン)とOUTPUT(74HC04の2番ピン)が繋いであります。

007_pullup.png

入力が Low のときの様子

007_inlow.jpg

入力が High のときの様子

007_inhigh.jpg


テスターの示す電圧はハイレベルのとき4.55[V]、ローレベルのとき0.14[V]でした。 プルアップしているジャンパー線を外してみたところ、電圧に変化はほとんど見られませんでした。 これは出力ピン(74LS04の2番ピン)の負荷が軽いせいもあり、 プルアップをしてもしなくてもテスターの表示電圧に変化がなかったということです。 しかしデータシート上の仕様では、74LS04の出力電圧VOH(min)は2.4[V]しか保証していませんので「プルアップしなくても良い」ということにはなりません。 特に量産品の設計をされる際には、製品の品質に影響してくるかもしれませんのでご注意ください。


次の画像は74HC04の4番ピン(出力ピン)にプローブの片方を繋ぎ変えたときの様子です。

007_opout.jpg

入力端子3番ピンがオープンなので、波形(水色)が異常です。 よく見ると74HC04の2番ピンの出力波形(黄色)にリップルノイズが乗っていて、同期しているように見えます。 CMOS ICの場合、入力端子をオープンにしてしまいますと出力に影響してしまいますので、 プルアップまたはプルダウンするなどの処理を忘れずに行いましょう。


3.CMOS ICの取り扱い

TTL ICの場合、使用していないものをその辺に放置しておいてもまったく問題ありませんが、 CMOS ICを同様に取り扱うと壊れる可能性があります。 またTTL ICの未使用端子は未接続のままでも問題ありませんが、CMOS ICの場合はプルアップ、またはプルダウンしておかないと これまた壊れる可能性があります。

このようにCMOS ICはTTL ICに比べて【壊れやすい】のです。 ...が、【壊れやすい】から【必ず壊れる】というわけでもありません。 現実として、ちょっとしたテスト回路を作って動かす程度であれば、おおよそ壊れないと思います。 ...というわけなので、(次の実習で)無理してTTL ICを購入する必要はありません。 TTL ICとCMOS ICの入力電圧、出力電圧についての知識があって、それを理解することができていれば全く問題ありません。

ただし、CMOS ICのオープンの入力端子に対する出力端子にオシロスコープのプローブを当ててみると、 異常なことになることが分かったかと思います。 なので、乱暴な扱いをするのはご自身で行うちょっとした回路のテストのときだけにしましょう。 間違っても製品の回路設計をするときに、乱暴な使い方をしてはいけません!



ページのTOPへ

メニュー